溺甘同棲~イジワル社長は過保護な愛を抑えられません~

「優花の部屋はこっちだよ」


呆然と立つ優花を片瀬が手招きで呼び寄せる。リビングの右手にはふたつの扉があり、片瀬は向かって右側のドアを開けた。

まず目に入ったのは、セミダブルのベッドだった。ベージュの色合いが優しい印象のファブリックで統一されている。


「ここはもともとゲストルームだったんだ。なにか必要なものがあれば、遠慮なく言ってもらってかまわないよ。なんだって用意しちゃうからさ」
「ううん、これ以上に必要なものなんてないよ。ありがとう」


短期間のこととはいえ、こんな立派な部屋に住まわせてもらえることになろうとは、まったくの想定外だ。


「ところで、片瀬くんはどんな仕事をしてるの? この前、社長って呼ばれていたけど……」
「あっ、そうか。俺、名刺も渡していなかったよね。ちょっと待ってて」


部屋を出てものの数十秒で戻った片瀬は、持ってきた名刺を優花に差し出した。
優花がまじまじと見つめたそこには、〝『株式会社トライリンク』社長 片瀬圭人〟とある。
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