溺甘同棲~イジワル社長は過保護な愛を抑えられません~
ここからふたりで
大きな玄関扉を背にしたところで、優花はこれまでにないほど大きく息を吐いた。
「ふぅ……緊張した」
胸に手をあてる優花の肩を片瀬がそっと引き寄せる。
「そんなに緊張してた? いつもと変わらない感じだったけど」
「変わらなくないよー。自分でもなにを話しているのか、途中でわからなくなっちゃった」
「お疲れさま。それと、ありがとう」
片瀬は微笑みながら優花の頬に唇を押し当てた。
片瀬に一〇八本のバラでプロポーズをされてから一ヶ月が経ち、今日は片瀬の両親に優花が初めて対面したのだ。
結婚に向けて動き出していることも、すでに一緒に暮らし始めていることも快く受け入れてもらえ、ホッとひと息といったところである。
気取ることもなく、とても気さくな両親だった。
「今日はこれから優花と行きたいところがあるんだ」