溺甘同棲~イジワル社長は過保護な愛を抑えられません~
その横顔を見つめると、切ない瞳で見つめ返された。
片瀬と正式に付き合うようになって一ヶ月。ふたりはまだ一線を越えていない。
優花に対する誠実さの表れなのかもしれないが、こういう形で気持ちを示してくれるとは思ってもみなかった。
「さ、行こう」
助手席から降ろされ、肩を抱かれて店内へ入る。
店先に出てきた依子は「お待ちしておりました」と温かく迎えてくれた。
繊細な懐石料理に舌鼓を打ち、優雅なひとときを過ごす。前回のようにひどく酔うことはないだろうが、今夜はアルコールを控えた。
たっぷり二時間、食事を楽しんだふたりがスタッフに案内されたのは、前回ひとり寂しく泊まったのと同じ部屋だった。
「優花ともう一度ここから始めたかった」
片瀬の腕が後ろから優花を包み込む。
「あの夜をやり直すことはできないけど、ここからふたりで始めよう」