溺甘同棲~イジワル社長は過保護な愛を抑えられません~

「ソフトウエアの開発だとかIT関連のサービスを提供してるんだ」
「……社長さんなんてすごいね」
「趣味が高じただけのことだから、べつにすごくないよ」


片瀬は謙遜するけれど、それを仕事にするには膨大なエネルギーが必要だったはず。職を失ったからこそ、そのすごさが痛いほどわかる。今の優花にはなんにもない。

片瀬によると、高校を卒業してアメリカの大学へ進学し、在学中に趣味から始めたソフト開発が思いのほかうまくいったため、思い切って起業したという。
日本へ帰ってきてからも業績をぐんぐん伸ばし、今では従業員を五百人も抱えているらしい。


「片瀬くん、本当にありがとう」


部屋にはベッドだけではなく、座り心地のよさそうなふたり掛けのソファと猫足のテーブルがあり、この部屋だけでこれまで以上に快適に過ごせそうだ。


「なるべく早く仕事を見つけて、出て行くようにするね」


そこで優花は、大変なことに気がついた。それも、最重要事項だ。
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