溺甘同棲~イジワル社長は過保護な愛を抑えられません~

「片瀬くん、恋人はその……いないの?」


引っ越しまで済ませておいて、今さらなにを聞くのかと思われるだろう。でもそこまで考えられたのが今なのだから仕方がない。

もしも『いる』と言われたら、すぐにでも出て行かなければならないだろう。そうとはいえ、本当にいたらと考えると、いやでも緊張する。


「いないよ」


あまりにもサラッと返され、逆に拍子抜けする。


「……ほんとに?」
「いたら宮岡さんをここに誘ったりしないよ。キミだってそうじゃない? 彼氏がいたら、俺のところには来ないだろうから」
「そ、そうだよね」


自分のことまで引き合いに出されるとは思いもしなかった。

〝彼氏〟という存在は、優花には最も遠くにあるものだ。
引っ込み思案が災いして、これまでに恋愛経験はゼロ。ちょっとした憧れを抱く相手は大学時代にいたが、片瀬のときのようにほとんど話したことはなかった。
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