溺甘同棲~イジワル社長は過保護な愛を抑えられません~
就職した会計事務所には男性といえば四十歳以上しかおらず、恋心を抱く相手がいなかった。
二十八歳にもなって乏しい恋愛事情のため、実家の親も黙っていられず、見合いを勧めてくるのだ。
優花がキスの経験すらないと知ったら、片瀬も相当驚くだろう。だから、それは絶対に内緒だ。
ひとまず、すぐに出て行かずに済み、優花はホッと胸を撫で下ろした。
「それから、この部屋を出て行くことは考えなくていいから。仕事が見つかっても、そのままここで暮らせばいいよ」
「ううん、そういうわけには! あ、そうだ、家賃。家賃くらい払わないと」
バッグから急いで財布を取り出した。
(こんなにゴージャスなマンションにいくら払うのが相場なのかわからないけど……。十万を超えて請求されたら困るな。さすがに一括でそんなに払えないから分割?)
置いてもらうのだから、家賃を払うのが当然。そんなことにも今頃気づく自分が情けなかった。
「家賃なんていらないよ。そんなつもりで宮岡さんを連れてきたわけじゃないからさ」
片瀬がクスクスと笑う。