溺甘同棲~イジワル社長は過保護な愛を抑えられません~

悪いジョークならば今すぐ撤回してほしい。

ところが片瀬は〝そうなんだ。ごめん〟などと言って笑い飛ばすどころか、笑みを消して真剣な表情で優花を見つめた。


「こんなこと、冗談で言ったりしないよ」


片瀬が壁に左手を突く。

(冗談じゃ、ない? 本当に私のことが……?)

過去の話とはいえ片瀬からそんな打ち明け話をされ、激しく動揺する。それ以上後ろに下がることができず、優花は小さく息を飲んだ。真っすぐな視線で見下ろされ、全身が緊張に包まれる。


「誰かと騒ぐわけでもなく、ひとり静かに本を読んでる姿をいつも見てた」


片瀬の優しい声が、まるでそよ風のように優花の耳をくすぐる。

高校時代の優花は、片瀬の言うようにいつもそうだった。特別親しい友人はおらず、休み時間には大好きな本を机の上に広げて読み耽っていた。

(まさかそんな姿を片瀬くんに見られていたなんて……)
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