溺甘同棲~イジワル社長は過保護な愛を抑えられません~

「優花、俺の恋人になってくれるよね?」


片瀬が、吐息を感じる距離で囁く。
とろけそうなほど甘美な誘惑だ。

これまで目立たずに生きてきた優花に舞い降りたのは、異常事態とも言える展開。
片瀬にキスをされ、そのうえ恋人になってほしいと言われるなど、ほんの一時間前の優花には想像もつかないことだった。

(でも片瀬くんは、きっと錯覚しているだけだよね……)

嬉しさで舞い上がりかけた心に、警告アラームが点滅する。

十年前の恋心が本当だとしても、そのときの想いが瞬間的に蘇っただけだろう。それを現在進行形の気持ちと勘違いしているだけだ。

そう考え、大きく揺れる自分の心を必死に立て直す。片瀬の問いかけに、優花はゆっくりと首を横に振った。

片瀬が軽く目を見開く。断られるのは想定外だったか。


「先走りすぎたか」


そう言って微笑んだ片瀬は、またすぐに表情を引きしめる。
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