溺甘同棲~イジワル社長は過保護な愛を抑えられません~

きっと片瀬は、恋人ごっこをして楽しんでいるのだろう。恋人になってほしいというのは、行き過ぎたジョークだった可能性が高い。
片瀬ほどの男が、なんの取り柄もない自分に興味を抱くとは思えないから。

十年前のことは百歩譲って真実だとしても、所詮は過去の恋心。再会したときに一瞬だけそのときの気持ちが再燃したのかもしれないが、とっくに鎮火しただろう。
優花をマンションに置いてしまった手前、恋人ごっこだけを続けている。

無理やりそう思い込もうとする優花だが、度重なる片瀬のスキンシップに心は大きく乱されていた。
言動のひとつひとつが優花を翻弄し、その度に思い出す『早く俺の気持ちに追いついて』という片瀬の言葉が、恋心を甘く刺激する。


「さてと、今日の朝ご飯もおいしそうだね」


テーブルに並んだ朝食を前に、片瀬はとびきりの笑顔で「いただきます」と手を合わせた。
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