溺甘同棲~イジワル社長は過保護な愛を抑えられません~

◇◇◇

片瀬を見送ったあと、その朝は優花もスーツに着替えてマンションを出た。
実は昨日、職安から連絡があり、新たな会計事務所を紹介してもらえたのだ。その日のうちに面接へ行き、入社が決まった。

今日は金曜日ということもあり、先方からは来週の月曜日からの出社をお願いされたが、なるべく早く新しい職場に慣れたいと優花から申し出ていた。

今度の会計事務所は五十代の夫婦がふたりで切り盛りしている小さなところ。昨日見学させてもらった事務所は、こぢんまりとしてアットホームな雰囲気だった。
それまではふたりの娘が事務処理を担っていたそうだが、結婚して遠くへ引っ越してしまったらしい。

優花は、その娘の代わりとして働くことになったのだ。

その事務所はマンションから電車を乗り継いで二十分のところにある。
最寄り駅から徒歩三分のオフィスビルにある二階の事務所は、デスクが三つとパーテーションで区切られた応接セットがあるだけの小さな造り。
以前優花が勤めていたのは大きな会計事務所だったので、規模からして違っていた。


「今日からどうぞよろしくお願いいたします」
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