溺甘同棲～イジワル社長は過保護な愛を抑えられません～

改めて優花が頭を下げると、所長の守谷（もりや）とその妻の喜和子（きわこ）は、「こちらこそよろしくね」と温かく出迎えてくれた。

身長一六〇センチの優花よりも小柄で細身の守谷と対照的に、喜和子はふくよかな体型をしている。ふたりとも黒々とした豊富な髪のせいか、年齢よりも若い印象だ。


「優花さん……って、私ったら嫌だわ。早速下の名前で呼んだりしたら失礼よね！」
「いえ、大丈夫です」


おおらかに笑う喜和子に、優花が恐縮しながら笑顔で返す。
名前で呼ばれると一気に親近感が増したように感じて、なんとなくくすぐったい思いだ。快く受け入れてくれる感じがしてうれしい。


「私のことも〝喜和子〟って呼んでね」
「はい、ではそうさせていただきます」


優花の言葉に気をよくした喜和子は、「主人のことは〝おじさん〟でもなんでもいいのよ」とおどける。
これに異議を申し立てたのは、ほかでもなく守谷本人だ。