溺甘同棲~イジワル社長は過保護な愛を抑えられません~

「もしかして例の女性ですか」


片瀬は時々、倉田はAIロボットなのではないかと思うことがある。
機敏な動きは計算し尽くされたプログラムがゆえ。平坦な話し方が、感情の存在を打ち消している。

今放ったひと言も、疑問形の言葉尻の割には語尾が上がらなかった。


「〝例の女性〟じゃなく、〝優花〟。そろそろ覚えてくれてもいいんじゃない?」


優花と再会してからというもの、片瀬がなにかにつけて話題にする名前なのだ。秘書としてそばに仕えているのだから、倉田も何度も耳にしているだろう。

とはいえ倉田の場合、わざとそうして呼んでいることは片瀬もわかってはいるが。


「社長のことですから、甘い言葉で彼女をうまく丸め込んだのでしょう」
「ずいぶんな言い方をするね。それじゃまるで俺が悪い男みたいじゃない?」
「違ったのでしたら申し訳ございません」

倉田が軽く頭を下げる。言葉でこそ謝罪しているが、悪びれた様子は微塵も見ない。
やはりAIなのではないか。
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