溺甘同棲~イジワル社長は過保護な愛を抑えられません~
五十歳目前になって生まれた娘を溺愛するあまり、折原はすぐさま手を回してきた。
だが、結婚にまったく興味のない片瀬は、その話を即座に断った。仕事の成功をエサに結婚をちらつかせる折原も、自分都合のわがままなその娘も、正直苦手なタイプだ。
「何度も言わせるなって。コスモジャパンとのM&Aはしないよ」
片瀬がきっぱりと言い切る。
「その〝優花さん〟でしたか? 彼女をマンションに住まわせて恋人のように振る舞うことが、コスモジャパンのご令嬢――恵麻(えま)さんへのあてつけなんですよね」
「……そんなつもりはないよ。優花は、俺が高校時代に好きだった女性なんだから」
片瀬は不覚にも一瞬言葉に詰まったが、なんとか自分を正当化しようと試みる。
「社長は、十年も前の恋に心を揺らすようなロマンティストでしたか? 私の記憶するところでは、そのようなお方ではなかったかと」
ずいぶんな言われようだ。耳が痛いのは図星だからか。