溺甘同棲~イジワル社長は過保護な愛を抑えられません~
ドキッとして後ずさると、片瀬は「宮岡さん……?」と優花の名字を口にした。
「えっ……」
まさか片瀬が優花に気づくとは思いもせず、大きく弾んだ心臓がそのまま早鐘を打っていく。
クラスどころか学校中の人気者だった片瀬は、いつでも話題の中心。明るい彼の行くところには自然と人が集まり、人望も厚かった。
友達と呼べる人が少なく、おとなしく目立たない優花とは真逆と言える存在だったのだ。
そんな片瀬が優花のことを覚えていたのだとしたら、奇跡と言ってもいいだろう。
「……もしかして、片瀬くん?」
本当はとっくに気づいていたが、照れ隠しのために優花はたった今気づきましたとばかりに返した。
「やっぱりそうか!」
片瀬の顔がパッと華やぐ。十年ぶりに眩しいほどの笑顔を見て、優花は目眩を起こしそうになった。