溺甘同棲~イジワル社長は過保護な愛を抑えられません~
ふたりの夜、ひとりの朝
優花のスマートフォンに片瀬から連絡が入ったのは、守谷会計事務所をちょうど出たときのことだった。『これからピックアップしに向かうから、近くで待っていてほしい』と言う。
迎えなんて必要ないと遠慮したが、聞き入れてもらえなかった。
仕方なしに、ビルの一階にあるコーヒーショップの窓際の席で待っていると、およそ三十分後、真っ白い高級車が目の前に停車した。
もしかして……と思っているうちに、片瀬が運転席から降り立つ。
急いで支度を整えて優花が店を出ていくと、片瀬はわざわざ助手席に回り込みドアを開けてくれた。
「ありがと……」
そんなことを男性からされたことのない優花は、ぎこちなく会釈を返すだけで精いっぱい。なんとか助手席に乗り込んだ。
初めての片瀬の車は、優花の知っているものとはまるで違った顔をしている。
木目調のパネルに白いレザーシートは、豪華さを惜しげもなく披露。エンジン音まで洗練されて聞こえるから不思議だ。
片瀬はウインカーを点滅させ、後方を確認しながら車を発進させた。