溺甘同棲~イジワル社長は過保護な愛を抑えられません~
「ちなみにここはオーベルジュだから、泊まることもできるんだ。明日は休みだし、なんなら泊まっていこうか?」
冗談とも本気ともつかない片瀬の言い方に、優花の鼓動が大きく跳ねる。片瀬とは同居しているが、オーベルジュに泊まるのは訳が違う。
顔を真っ赤にして優花が首を横に振ると、片瀬は楽しそうにクスッと笑った。
(……ほんとに二十八歳にもなって情けない。もっと上手に切り返したいのに)
優花が自分の反応にガッカリしていると、飲み物が運ばれてきた。
「優花、再就職おめでとう」
「ありがとう」
車の運転がある片瀬はスパークリングウォーターで、場の雰囲気に負けないためにもと、優花は片瀬の勧めもあってワインにした。もともとお酒は嫌いじゃない。
出されたワインは芳醇な味わいで喉ごしがよく、油断したら飲み過ぎてしまいそうだ。
先付のさよりの三種盛りに、八寸の八幡巻き。時間をかけてゆっくりと運ばれてくる料理はどれも彩りが美しく、上品な味だった。