溺甘同棲~イジワル社長は過保護な愛を抑えられません~

「いや、面影はあったけど、ますます綺麗になっていたから、ちょっと自信はなかったんだ」
「き、綺麗……!?」


とんでもないと大きな目をさらに見開き、優花が必死に首を横に振る。その拍子に長い栗色の髪が胸もとで揺れた。
お世辞だとわかっていても、優花の頬は熱をもつ。


「この辺に住んでるの?」


片瀬に聞かれて「うん」と返したものの、そのあとに気の利いた言葉を続けられない。優花はもともとポンポンと会話を繋げることが苦手だ。
せめてこの場限りでいいから、上手に話せたらいいのにと恨めしくなる。

優花が困っていることに気づいたか、片瀬が「今はなにしてるの?」と別の質問をしてくれた。


「今? ……今は歩いていたところ、かな」


ありのままを優花が答えると、片瀬は「ぷっ」と吹き出した。

(えっ、どうして?)


「おもしろいね、宮岡さんは」
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