溺甘同棲~イジワル社長は過保護な愛を抑えられません~
かすれた声で聞かれて迷う。言うべきか、言わざるべきか。
でも知らない世界へ飛び込む不安を和らげるには、伝えておいたほうがいいのかもしれない。
「……あの、ね、実は私、こういうことは初めてで……」
優花が正直に打ち明けた瞬間、片瀬の顔が真顔になる。
「初めて? ……本当に?」
聞き返されてコクンと頷く。
「……もしかして、キスも?」
ぎこちないキスで気づかれたのだろう。優花は、消え入りそうなほどの小さな声で「うん」と答えた。
心なしか、微妙な空気が漂った気がする。
(言わないほうがよかったのかも……)
後悔に包まれる中、片瀬は眉根を軽く寄せてなんとも形容しがたい表情で優花をしばらく見つめたあと、静かに身体を起こした。