溺甘同棲~イジワル社長は過保護な愛を抑えられません~
夢から覚めた朝
二日後の月曜日の朝。優花が朝食の準備を終えてダイニングテーブルで待っていると、片瀬が慌ただしくやってきた。
「食べてる時間がないんだ」
「あ、そ、そうなんだ」
ブリーフケースを小脇に抱え、ネクタイを締めながら玄関へと足早に行く。そして、「いってきます」と笑顔を置いて、部屋を出て行った。
片瀬が顔を出してから、ものの一分。部屋は再び静かな空気に包まれた。
花いかだのオーベルジュから帰宅した土曜日は午後から仕事が入ったと出かけ、日曜日にも用事があると朝から夜まで片瀬は外出。
帰ってくれば普段通りに優花に笑顔を向けるが、あの夜の一件以降、キスをいっさいしなくなった。
なにかにつけて触れてきたことが嘘のように、片瀬は優花に接するのだ。避けられているわけではない。でも、最初の頃とは明らかに違う。
そんな態度にどう対応したらいいのかわからず、優花はなるがまま流されるだけ。その度に胸の奥がチクチクと痛んで仕方がない。
片瀬は翌日も朝食を食べずに出かけてしまったため、そのまた翌日、優花は手軽に食べられるようにおにぎりを作った。それならば、車の中で食べられるだろう。