溺甘同棲~イジワル社長は過保護な愛を抑えられません~
「なにも食べないのは身体に悪いから」
玄関まで追いかけた優花がおにぎりを詰めた小さなバッグを手渡すと、片瀬は虚を突かれたような表情で一瞬固まった。
(ひょっとして迷惑だったかな)
片瀬に頼まれたわけではない。出すぎたことをしてしまったか。
「あ、余計なことだったよね。ごめん」
優花がバッグを慌てて引っ込めようとすると、片瀬はそれを引き止めた。
「いや、ありがとう」
満面の笑みを見て優花がホッとする。その笑顔は、ここ数日の違和感が気のせいだったのではないかと思えるようなものだった。
ところが、それは笑顔だけ。
「じゃ、いってきます」
片瀬は靴を履いて、そのまま出て行った。今日もまた、ハグもキスもなし。一線を引いた態度は変わらずじまい。