溺甘同棲~イジワル社長は過保護な愛を抑えられません~

片瀬の心に、明確な変化が現れていることは確実だった。そしてその変化は、当初片瀬が優花に恋人宣言したものとは真逆のものだろう。

(……私に恋愛経験が一度もないからだよね。やっぱり重くて面倒な女だと思われたんだ)

半ば強引に同居を進めた立場として、片瀬は今さらここを出るように言えないのだろう。片瀬の好意に甘えて、よく考えもせずに転がり込んだのは間違いだったのだ。

優花は浅はかな自分が情けなかった。


それからも片瀬は毎朝早く仕事に出かけ、夜遅くに帰ってくる生活を続けている。週末にもほとんど家におらず、優花と顔を合わせるのは朝のほんの数分だけ。
社長という立場上、本当に忙しいのかもしれないが、優花のことを避けている部分もあるだろう。

あの夜のことを自分は気にしていないことだけはせめてわかってもらおうと、優花は普通に振舞うことにしていた。
重い女と関わったと思ってほしくなかった。


ふと目覚めた午前一時。
優花は自分がダイニングテーブルに突っ伏して眠っていることに気がついた。目の前には簿記のテキストが広げられたままだ。
いつの間にか寝入ってしまったらしい。
< 66 / 175 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop