溺甘同棲~イジワル社長は過保護な愛を抑えられません~
そこでふと、自分の肩と膝に毛布が掛けられていることに気づいた。掛けてくれたのは、ほかでもなく片瀬だろう。
同居している優花が風邪をひけば、片瀬にも移る可能性がある。それを免れるために過ぎないのかもしれない。
でも、こっそり見せられた片瀬の優しさに胸が温かくなると同時に、切なくなった。
そんな生活が十日ほど過ぎ、守谷会計事務所での仕事も少しずつ慣れてきた頃のことだった。
「今日は優花さんも一緒に来てくれるかな?」
外出する準備をしていた守谷が、優花に優しく声をかけた。
「私も、ですか?」
守谷がこれから向かうのは新規の取引先だと、喜和子から聞いている。昨日電話で問い合わせがあり、打ち合わせに行くのだと。
そこに事務担当の優花を同行させるとは、いったいどういうことなのだろうか。
不思議に思ったが、それがこの事務所のやり方なのかもしれないと、守谷に従った。