溺甘同棲~イジワル社長は過保護な愛を抑えられません~

「そうなのかぁ。どんなタイプを考えているんだい?」
「部屋数はひとつで十分なんです。そこにバスとトイレが付いていれば1Kでも。できれば事務所の近辺で考えていますけど、多少距離があってもいいかな、と思っています」


あまり贅沢は言っていられない。片瀬の高級マンションでの生活に慣れてしまう前に出た方がいいだろう。


「それじゃ、知り合いの不動産屋にあとで聞いてみよう」
「ありがとうございます。助かります」


優花が頭を下げたところで、ゆっくりと電車が止まる。プシューッと音を立ててドアが開くと、守谷は「降りますよ」と優花を促した。


駅の改札を抜けて駅を出ると、高層ビルが建ち並ぶオフィス街が現れた。
守谷会計事務所のクライアントは小さな企業がほとんどだが、これから訪れるのはいったいどんな会社なのだろう。

優花がそんなことをぼんやりと考えながら歩いていると、守谷は「ああ、ここですね」と不意に立ち止まった。
その視線の先にはタワービル。空高くそびえ、てっぺんが霞んで見えるほどだ。
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