溺甘同棲~イジワル社長は過保護な愛を抑えられません~

優花は思わず「すごい……」と呟いた。

回転自動ドアから入り、四基並んだエレベーターの前に守谷と並んで立つ。案内表示を見て、四十五階まであるビルだとわかった。

三十三階まで一気にエレベーターで上がる。ドアが開くと、数メートル先に受付があった。
短い毛足をしたベージュの絨毯を進んでいくと、受付に座る女性が頭を下げる。背後の壁にゴールドの文字で〝株式会社トライリンク〟とあった。

(トライリンクって、どこかで聞いたことのある社名だな……。もしかしたら就活中に職安で見かけたのかな)

そんなことを考えながら、守谷が「守谷会計事務所の守谷と申します」と名乗る後ろに立って待つ。


「社長様と十一時にお約束をさせていただいているのですが……」
「かしこまりました。少々お待ちくださいませ」


受付の女性は、手もとにある電話の受話器を持ち上げた。二言三言交わした後、守谷に顔を向ける。秘書が迎えにくるらしく、ここで待ってほしいとのことだった。

今さらながら自分が同行させられた理由を聞きたくなり、優花が「あの」と口を開く。
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