溺甘同棲~イジワル社長は過保護な愛を抑えられません~
「お嬢さんも、よくこうして所長に同行されていたんですか?」
「いや、たいていは私ひとりだよ。今回はね、」
守谷がそこまで言ったとき、後ろのエレベーターのドアが開き、ひとりの男性が降りてきた。
「大変お待たせいたしました」
どこかで見たことのある顔だった。
華奢な身体に鋭く細い目。神経質そうに見える雰囲気が、どことなく誰かに似ている気がする。
(でも、誰だろう……?)
首を捻ってみるが、思いつく人物は出てこない。
「秘書をしております倉田恭平と申します」
守谷と名刺交換をした倉田が、ふと優花を見る。
冷やかな視線にたじろぎながら、「宮岡と申します」と優花は頭をぺこりと下げた。名刺は持ち合わせていない。
倉田はそれに対してなにか答えるわけではなく、「こちらへどうぞ」とエレベーターを手で差した。