溺甘同棲~イジワル社長は過保護な愛を抑えられません~

ふたつほどフロアを上がり三十五階に到着する。倉田の後をついていきながら、長い通路を歩いていく。

ガラス張りの壁の向こうでは、長く大きなデスクがひとり用に区切られ、機能的でデザイン性の高いオフィスが広がっていた。
ある人は電話中、ある人は立ちミーティングスペースで打ち合わせ。またある人は真剣な顔でパソコンに向かっていた。

一番奥まで到達すると、スチール製の扉の前で倉田が立ち止まる。そこが社長室のようだ。

ドアが開けられ中へ招き入れられると応接室が現れた。黒で統一されたスタイリッシュな内装だ。隣の部屋に続くドアの向こうが、社長の執務室なのかもしれない。

皮張りのソファの前に案内されたところで、部屋の横に位置したドアが開いた。

いよいよ社長の登場かと目を向け、優花は「えっ」と小さく声をあげた。そこに立っていたのが片瀬だったから。

どこかで聞いたことのある会社だったのも当然。片瀬が社長を務めるトライリンクだったのだ。

秘書の倉田は、片瀬と再会したときに声をかけてきた人物だったことも思い出した。どうりで、どこかで見たことのある顔だと思ったわけだ。

(まさか片瀬くんの会社だったなんて……)
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