溺甘同棲~イジワル社長は過保護な愛を抑えられません~
「先日、ビルを一棟購入したんです」
「ほぉ、ビルを」
守谷が感心したように小刻みに頷く。
「その購入金額は建物の取得価額として計上できないそうですが、どういうことですか?」
「ビルを一棟購入したのであれば、土地付き建物を取得したということになります。建物と土地はそれぞれの適正な価額で区分して計上しなければならないんです」
「建物だけというわけにはいかないということですね?」
聞き返した片瀬に守谷が大きく頷く。
「その際の適正な価額ですが、土地の金額を先に算出する、建物の金額を先に算出するなど、いくつかの算出方法があるんです。土地は減価償却資産ではありませんので、建物の金額を多くすれば、税務上は有利になりますね」
「なるほど」
ふたりの会話を聞きながら、優花は守谷の隣でそのやり取りを手帳に書き留めていく。クライアントの要望を聞き漏らさないようにするためだ。