溺甘同棲~イジワル社長は過保護な愛を抑えられません~

歳は優花と同じくらい。手足が長く、ストレートロングの黒髪が艶めく美しい女性だ。
ひらりと舞う蝶のように片瀬の前へ立ち、その女性が片瀬の腕に自分の腕を絡める。

片瀬は驚いたように顔をハッとさせ、どこか慌てた様子だった。優花をチラッとひと目見てから、彼女の腕を優しく払う。

(誰なんだろう……)

まるで恋人のようにも見える自然な雰囲気のふたりを前にして、優花の心が乱される。


「圭人さん、なかなか電話に出てくれないから来ちゃった」
「仕事中だよ」


言い方こそ素っ気ないが、それはもしかしたら守谷や優花の手前もあるのかもしれない。


「ごめんなさい。わかってはいたんだけど……。ねえ、圭人さん」
「ちょっとこっちに来て」


なにかを言いかけた彼女の背中を押したかと思えば、守谷に向かって「すみません、これで失礼します」と、片瀬は社用車の方へ歩きだした。
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