溺甘同棲~イジワル社長は過保護な愛を抑えられません~

(……どうしよう)

動揺している優花に上品に微笑みかける。断られることを想定していない、余裕の笑みだった。
案内されるまま奥の部屋へ入った優花の後に、片瀬も続く。

VIPを通す部屋だろうか。ベージュの皮張りソファがふたつ並び、その脇にはフィッティングルームか、カーテンで区切られた小部屋がある。

いったん店内へ行ったスタッフは、しばらくするとワンピースやパンプスを何点か抱えて戻ってきた。
タイトなシルエットのものから、ふんわりとしたフレアタイプのもの。カラーもすっきりとした大人っぽい黒やかわいらしいピンクベージュなどいろいろだ。

試着するように言われ、次々と袖を通していく。

こっそり見た値札は、どれも十万円を下らないものばかり。バッグまで合わせたトータルでの値段を計算して、優花は軽い目眩を覚えた。


「今回の方はとても色白でいらっしゃいますので、このワンピースだとお顔がよく映えますね」


スタッフが片瀬に向かって何気なく発した〝今回の〟に、優花の耳が反応する。
〝今回の〟ということは、片瀬はこの店に女性を連れてくることが頻繁にあるのだろう。
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