Crazy for you ~引きこもり姫と肉食シェフ~
莉子は鏡に向かって化粧をするとき悩んだ。藤堂はすっぴんがいいと言っていた、だからと言ってすぐにそのまますっぴんで会うのもどうだろう、そもそもすっぴんでなど外に出たくない。でも藤堂にはいつもどう思われていたのだろうと不安にもなった。だから手に取ったファンデーションは元に戻していた。本当のすっぴんは恥ずかしい、マスカラをほんの少し乗せ、口紅は二度もティッシュオフした。
藤堂は笑顔になっていた、服装だって──。
莉子は再び悩む。さすがによれよれのTシャツの古ぼけたジャージと言う訳には行かない。結局ウール素材の膝上丈のパンツに足を通していた。
(昨日言われてすぐってどうよ……?)
思うが藤堂の好みに合わせたい自分がいた、そのパンツだって藤堂と別れた後、入った店で購入したものだ。それに膝下まであるブーツを合わせた。
「どうぞ」
藤堂は満面の笑みで、莉子の前にプレートを置いていた。
今日のメインディッシュは骨付き牛肉の赤ワイン煮込みである。その香りに莉子は「わあ」と声を上げていた。
「いただきます」
小さな声で言う莉子に、
「召し上がれ」
藤堂は向かいの席に座りながら言う。
「可愛いよ」
藤堂は素直に言っていた、意味を察した莉子は肉を切る手を止めて上目遣いに藤堂を見る。
「化粧が駄目とは言わないけど。花村さんは元が綺麗なんだからそのままでいいんだよ」
褒めているのに、莉子は恥ずかし気に目を下げてしまう。
藤堂は、莉子がフォークで肉を口に運ぶさまをじっと見ていた。
(──ああ、足や指もいいけどな……)
莉子の唇が肉を閉じ込めた、フォークが抜かれ、唇が窄まったまま咀嚼が始まる。時折舌先が覗いて唇や口の端を拭う。
(口も、いいよなあ……)
莉子の唇を凝視していたが、ふと視線を感じて目線を上げると莉子と目が合った。 莉子が微笑むので、自分も微笑む、本音を隠して。
(──ああ、マジで、どうにかしてやりたいよなあ……)
今一番近いのは、テーブルの下の足だろう。しかも莉子はわざとなのかタイツも履いていない、つまり素足の膝がすぐそこにある。膝頭を撫で回して、太腿に指を食い込ませて、その更に奥まで手を差し入れて──。 あらぬ想像をしながら、顔だけは爽やかな笑顔を貼りつけていた。
藤堂は笑顔になっていた、服装だって──。
莉子は再び悩む。さすがによれよれのTシャツの古ぼけたジャージと言う訳には行かない。結局ウール素材の膝上丈のパンツに足を通していた。
(昨日言われてすぐってどうよ……?)
思うが藤堂の好みに合わせたい自分がいた、そのパンツだって藤堂と別れた後、入った店で購入したものだ。それに膝下まであるブーツを合わせた。
「どうぞ」
藤堂は満面の笑みで、莉子の前にプレートを置いていた。
今日のメインディッシュは骨付き牛肉の赤ワイン煮込みである。その香りに莉子は「わあ」と声を上げていた。
「いただきます」
小さな声で言う莉子に、
「召し上がれ」
藤堂は向かいの席に座りながら言う。
「可愛いよ」
藤堂は素直に言っていた、意味を察した莉子は肉を切る手を止めて上目遣いに藤堂を見る。
「化粧が駄目とは言わないけど。花村さんは元が綺麗なんだからそのままでいいんだよ」
褒めているのに、莉子は恥ずかし気に目を下げてしまう。
藤堂は、莉子がフォークで肉を口に運ぶさまをじっと見ていた。
(──ああ、足や指もいいけどな……)
莉子の唇が肉を閉じ込めた、フォークが抜かれ、唇が窄まったまま咀嚼が始まる。時折舌先が覗いて唇や口の端を拭う。
(口も、いいよなあ……)
莉子の唇を凝視していたが、ふと視線を感じて目線を上げると莉子と目が合った。 莉子が微笑むので、自分も微笑む、本音を隠して。
(──ああ、マジで、どうにかしてやりたいよなあ……)
今一番近いのは、テーブルの下の足だろう。しかも莉子はわざとなのかタイツも履いていない、つまり素足の膝がすぐそこにある。膝頭を撫で回して、太腿に指を食い込ませて、その更に奥まで手を差し入れて──。 あらぬ想像をしながら、顔だけは爽やかな笑顔を貼りつけていた。