Crazy for you ~引きこもり姫と肉食シェフ~
「香子は姉です、私と香子は一卵性の双子なんです」
「──双子か」
尊が莉子の耳元で囁いた。
「双子かあ、ええ、でも本当にそっくりー。本当にCaccoじゃないのー?」
拓弥は未練があるようだ。 莉子は手を離してもらって、持ってきた小さなトートバッグから手帳を取り出した。
表紙の裏のポケットに写真が挟まれていた、父と母と香子の四人で撮った写真だ。それはまだ小学生の頃のもの。なぜ持ち歩いているかと言えば、自分が笑顔の数少ない写真だからだ。まだ双子が嫌だと、真剣に思っていなかった頃の。そう思うようになってからは格段に家族写真は減った、自分が撮る側に回ったり、撮られても笑顔ではなかったりする。
小学生と言えども面影はある、それを見た拓弥は目を輝かせた。
「ああ、本当だ! そっくりだ!」
言われて莉子はまた目を固く閉じてしまう、その後に続く言葉を知っている、『莉子は香子にそっくり』、何回も聞いた言葉だ。自分は姉のコピーなのかと思う、現に今はゴーストライターだ、姉の分身なのだろうか。
拓弥の手から写真を取り上げ、尊も見た。
何処か旅行に行った先で撮った物だろう。両親を背に、二人は手を繋いでいた。確かによく似ている、しかしきちんと気を付けの姿勢で口の端だけ上げた笑みの少女と、目を細めて真っ白な歯を見せて笑う少女は静と動、表裏のようでもあった。
「へええ、そっかあ、Caccoは双子だったんだあ! ええーっ、じゃあさ、今度Caccoに会わせてよ!」
「それは……」
嫌だ、とも言えず、言い訳を探した。
「俺、Caccoのファンなんすよー! この間先行販売されたシングルカットのもすんげーいい! アルバムの発売延期されたじゃないっすか! なんで……」
「拓弥、いい加減にしろ」
鋭い声に拓弥は瞬時に口を閉じ、莉子ははっとして尊を見た。
「──双子か」
尊が莉子の耳元で囁いた。
「双子かあ、ええ、でも本当にそっくりー。本当にCaccoじゃないのー?」
拓弥は未練があるようだ。 莉子は手を離してもらって、持ってきた小さなトートバッグから手帳を取り出した。
表紙の裏のポケットに写真が挟まれていた、父と母と香子の四人で撮った写真だ。それはまだ小学生の頃のもの。なぜ持ち歩いているかと言えば、自分が笑顔の数少ない写真だからだ。まだ双子が嫌だと、真剣に思っていなかった頃の。そう思うようになってからは格段に家族写真は減った、自分が撮る側に回ったり、撮られても笑顔ではなかったりする。
小学生と言えども面影はある、それを見た拓弥は目を輝かせた。
「ああ、本当だ! そっくりだ!」
言われて莉子はまた目を固く閉じてしまう、その後に続く言葉を知っている、『莉子は香子にそっくり』、何回も聞いた言葉だ。自分は姉のコピーなのかと思う、現に今はゴーストライターだ、姉の分身なのだろうか。
拓弥の手から写真を取り上げ、尊も見た。
何処か旅行に行った先で撮った物だろう。両親を背に、二人は手を繋いでいた。確かによく似ている、しかしきちんと気を付けの姿勢で口の端だけ上げた笑みの少女と、目を細めて真っ白な歯を見せて笑う少女は静と動、表裏のようでもあった。
「へええ、そっかあ、Caccoは双子だったんだあ! ええーっ、じゃあさ、今度Caccoに会わせてよ!」
「それは……」
嫌だ、とも言えず、言い訳を探した。
「俺、Caccoのファンなんすよー! この間先行販売されたシングルカットのもすんげーいい! アルバムの発売延期されたじゃないっすか! なんで……」
「拓弥、いい加減にしろ」
鋭い声に拓弥は瞬時に口を閉じ、莉子ははっとして尊を見た。