Crazy for you ~引きこもり姫と肉食シェフ~
「莉子さんはカコさんとは関係ない、その話を持ち込むな」
「ええ、でも、双子のきょうだいだって言うなら……」
「お前だって、尊の弟か、じゃあ店で優遇されるよう便宜をはかれって言われたら嫌だろう」
「──あー……うん……」
「だったらこの話はもう終わりだ。こちらは805号室の花村莉子さんだ、覚えておけ」
言われて莉子はぺこりと頭を下げた、拓弥も頭を下げ、
「弟の拓弥でーす……」
元気なく挨拶する。
「飯、食うんだろ。もうできるぞ、早く手を洗って来い」
「へーい」
それでも渋々と言った様子で、拓弥はキッチンから消えた。
莉子は小さな溜息を吐く。
「あの……ありがとうございます」
尊に礼を述べていた。
「いいえ」
尊だって礼の意味を判っている。
「お姉さんとはうまく行ってないの?」
「あ、いえ……」
否定しかけて思う、何を今更取り繕う必要があるのか。
「ええ、ちょっと……トラウマです、いつも似ていると言われて、私はいないんじゃないかと思えるほどで……」
淋し気な横顔だった、それが莉子に見え隠れする影なのだとはっきり判った。
「──莉子」
急に呼ばれて、莉子は驚いて尊を見た。
「は、はい……!?」
名前を呼ばれて、心臓が早鐘を打ち始める。
「双子の姉妹がいるなら、苗字より名前の方がいいでしょう、これからはそう呼ばせてもらいます、俺の事も尊でいいから」
「え、でも……」
「この家で藤堂って呼んだら拓弥も振り返りますよ、いいんですか?」
いいも悪いも、とは思ったが、莉子は頷いていた。
「じゃあ、そういう事で」
尊は三枚の皿を並べて、元々二人分で用意していた料理を、器用に三等分にしていた。
「ええ、でも、双子のきょうだいだって言うなら……」
「お前だって、尊の弟か、じゃあ店で優遇されるよう便宜をはかれって言われたら嫌だろう」
「──あー……うん……」
「だったらこの話はもう終わりだ。こちらは805号室の花村莉子さんだ、覚えておけ」
言われて莉子はぺこりと頭を下げた、拓弥も頭を下げ、
「弟の拓弥でーす……」
元気なく挨拶する。
「飯、食うんだろ。もうできるぞ、早く手を洗って来い」
「へーい」
それでも渋々と言った様子で、拓弥はキッチンから消えた。
莉子は小さな溜息を吐く。
「あの……ありがとうございます」
尊に礼を述べていた。
「いいえ」
尊だって礼の意味を判っている。
「お姉さんとはうまく行ってないの?」
「あ、いえ……」
否定しかけて思う、何を今更取り繕う必要があるのか。
「ええ、ちょっと……トラウマです、いつも似ていると言われて、私はいないんじゃないかと思えるほどで……」
淋し気な横顔だった、それが莉子に見え隠れする影なのだとはっきり判った。
「──莉子」
急に呼ばれて、莉子は驚いて尊を見た。
「は、はい……!?」
名前を呼ばれて、心臓が早鐘を打ち始める。
「双子の姉妹がいるなら、苗字より名前の方がいいでしょう、これからはそう呼ばせてもらいます、俺の事も尊でいいから」
「え、でも……」
「この家で藤堂って呼んだら拓弥も振り返りますよ、いいんですか?」
いいも悪いも、とは思ったが、莉子は頷いていた。
「じゃあ、そういう事で」
尊は三枚の皿を並べて、元々二人分で用意していた料理を、器用に三等分にしていた。