Crazy for you ~引きこもり姫と肉食シェフ~
*
食事の間も、拓弥はずっと莉子を気にしていた。莉子は思う、まだ疑われている、香子が目の前にいると思っているのだろうと。
尊は気を使って、莉子と拓弥を隣り合わせの席にしていた、真正面より視線を感じなくて済むだろうと思ったからだ。そして莉子の目の前には尊が座っている。終始笑顔で莉子に話しかけ、昼間だと言うのに白ワインを傾けている。莉子も勧められたがまだ仕事があるからと断った、実際にはそれほど強いたちではない、他所のお宅で醜態は晒せない。
ムニエルを口に運びながら思う。
(──藤堂さんと一緒にご飯食べるの……初めてだ……)
そう思うと急にドキドキし始めた。 拓弥の視線も気になるが、それよりも目の前の尊の方がそわそわする。 食事よりも酒の方が進んでいるようだ。時折拓弥に半分以上上げたムニエルを口に運ぶが、その回数よりグラスに口を付ける回数の方が多い。
(お酒……好きなのかな……)
盗むように尊の姿を見ていると、
「莉子さんはどこで兄貴と知り合ったの?」
突然拓弥に聞かれて、莉子の背筋が伸びる。
「そんな事、どうでもいいだろう?」
尊が牽制した、部屋を間違えた話などしていない。
「だって。カコの妹だよ?」
「ただの女性だ、カコの事は忘れろ」
「でも……カコに逢いたい」
「もうその話はやめろって言ったろ」
「だって」
「あの……姉は、都内に住んでいるので……」
莉子は小さな声で話し始めた。
「このマンションに来る事は、あまりないですし……気まぐれで来ることはあるにはありますけど……私の為に時間裂いて、わざわざ来るなんて……」
仕事だと言えば、来てくれるだろうか。いや、電話で済ませようとするだろう。香子がやってくるのは突然、たまたま近所に来たとか、大量のリテークを持ってくる時くらいか。
食事の間も、拓弥はずっと莉子を気にしていた。莉子は思う、まだ疑われている、香子が目の前にいると思っているのだろうと。
尊は気を使って、莉子と拓弥を隣り合わせの席にしていた、真正面より視線を感じなくて済むだろうと思ったからだ。そして莉子の目の前には尊が座っている。終始笑顔で莉子に話しかけ、昼間だと言うのに白ワインを傾けている。莉子も勧められたがまだ仕事があるからと断った、実際にはそれほど強いたちではない、他所のお宅で醜態は晒せない。
ムニエルを口に運びながら思う。
(──藤堂さんと一緒にご飯食べるの……初めてだ……)
そう思うと急にドキドキし始めた。 拓弥の視線も気になるが、それよりも目の前の尊の方がそわそわする。 食事よりも酒の方が進んでいるようだ。時折拓弥に半分以上上げたムニエルを口に運ぶが、その回数よりグラスに口を付ける回数の方が多い。
(お酒……好きなのかな……)
盗むように尊の姿を見ていると、
「莉子さんはどこで兄貴と知り合ったの?」
突然拓弥に聞かれて、莉子の背筋が伸びる。
「そんな事、どうでもいいだろう?」
尊が牽制した、部屋を間違えた話などしていない。
「だって。カコの妹だよ?」
「ただの女性だ、カコの事は忘れろ」
「でも……カコに逢いたい」
「もうその話はやめろって言ったろ」
「だって」
「あの……姉は、都内に住んでいるので……」
莉子は小さな声で話し始めた。
「このマンションに来る事は、あまりないですし……気まぐれで来ることはあるにはありますけど……私の為に時間裂いて、わざわざ来るなんて……」
仕事だと言えば、来てくれるだろうか。いや、電話で済ませようとするだろう。香子がやってくるのは突然、たまたま近所に来たとか、大量のリテークを持ってくる時くらいか。