Crazy for you ~引きこもり姫と肉食シェフ~
「そっかあ、忙しいもんなあ。え、でもさあ、収録現場を覗かせてもらえるとか、あ、楽屋にお邪魔するとかさ! あ、年明けからライブ始まるじゃん! いい席を……」
「拓弥、まだ言うか」
尊に言われて、拓弥は首をすぼめる。
「きょうだいにだって、限度はあるだろう」
「……判ってるよ。でも双子だよ?」
「双子だって他人だ、本人じゃない」
言われて、莉子は目を見開いた。 誰も彼も、よく似た姉妹だと言った、なのに中身はこうも違うのねと少し笑われもした。 それを、別人だと言ってくれた、尊は香子を知らないからそう言うのだろうと思ったが、それでも嬉しかった。
「へーい……でも、なんでリコさんは、一緒にバンドやらなかったの?」
言われて、またもや莉子は肝が冷える、あまり聞かれたくはない事柄だ。
それでもおずおずと喋り出す。
「……私は歌は下手だから……人前に出るのも苦手だし……」
そうだろうな、と尊は思う。年下の拓弥相手にもきちんと目を見て会話ができない程だ。
「姉は視線を浴びるのが好きなタイプだし、姉には天職でしょうけど、私には……」
「双子だからって足並みをそろえる必要はない」
尊はグラスを傾けながら言った。
「莉子さんは莉子さんなりに頑張ってる、それでいい」
外出は苦手だと言っていたのに、毎日尊の店まで通っている。今日だって全く乗り気ではなかったようだが、徒歩数分もかからない距離をやって来た。それだけでも十分頑張っていると判る、もちろん尊の言いなりになっているだけなのだが。
莉子は嬉しそうに微笑んだ、それを見て、拓弥が首を傾げる。
「兄ちゃん、珍しくまだ口説いてないんだ?」
とんでもないことを口走った。
「たーくーやーっ」
思わず声を荒げる。
「え、だってさ。兄ちゃん、割と照準定めると一気に攻めるじゃん。家に上げるくらいだから恋人なのかと思ったら友達とか言うし、なんか優しい言葉なんかかけちゃって、口説いてる最中にしては──いたっ!」
尊の長い足が、拓弥のすねを蹴ったなどとは、莉子は知らない。
「拓弥、まだ言うか」
尊に言われて、拓弥は首をすぼめる。
「きょうだいにだって、限度はあるだろう」
「……判ってるよ。でも双子だよ?」
「双子だって他人だ、本人じゃない」
言われて、莉子は目を見開いた。 誰も彼も、よく似た姉妹だと言った、なのに中身はこうも違うのねと少し笑われもした。 それを、別人だと言ってくれた、尊は香子を知らないからそう言うのだろうと思ったが、それでも嬉しかった。
「へーい……でも、なんでリコさんは、一緒にバンドやらなかったの?」
言われて、またもや莉子は肝が冷える、あまり聞かれたくはない事柄だ。
それでもおずおずと喋り出す。
「……私は歌は下手だから……人前に出るのも苦手だし……」
そうだろうな、と尊は思う。年下の拓弥相手にもきちんと目を見て会話ができない程だ。
「姉は視線を浴びるのが好きなタイプだし、姉には天職でしょうけど、私には……」
「双子だからって足並みをそろえる必要はない」
尊はグラスを傾けながら言った。
「莉子さんは莉子さんなりに頑張ってる、それでいい」
外出は苦手だと言っていたのに、毎日尊の店まで通っている。今日だって全く乗り気ではなかったようだが、徒歩数分もかからない距離をやって来た。それだけでも十分頑張っていると判る、もちろん尊の言いなりになっているだけなのだが。
莉子は嬉しそうに微笑んだ、それを見て、拓弥が首を傾げる。
「兄ちゃん、珍しくまだ口説いてないんだ?」
とんでもないことを口走った。
「たーくーやーっ」
思わず声を荒げる。
「え、だってさ。兄ちゃん、割と照準定めると一気に攻めるじゃん。家に上げるくらいだから恋人なのかと思ったら友達とか言うし、なんか優しい言葉なんかかけちゃって、口説いてる最中にしては──いたっ!」
尊の長い足が、拓弥のすねを蹴ったなどとは、莉子は知らない。