Crazy for you ~引きこもり姫と肉食シェフ~
「嘘でしょ……っ」
途端に深呼吸をし全身に血液が回り出すのを感じる、全身が心臓になったように感じた、指先も脳さえもドクドクと脈打って震える。
「……藤堂……さん……っ」
両手で顔を覆った。
好きだと告白されるのは初めてだった、こんなにも誰かを思って狂おしい気持ちになるのも──。
***
買い物から戻った尊は、まだ家に居た拓弥に香子のバンドの事を聞いた。 確かに数曲、花村莉子の名前で楽曲がある事を拓弥は知っていた。
「貸してやるよ!!!」
喜び勇んで部屋からCDを持ってきた。
Cacco with bangはデビューからほぼ毎年アルバムを出している、計五枚のアルバムだった。
「莉子さんが作ったのはバラードとかポップス調だよなあ。でも俺はKKが作った曲が好きだな! Caccoは作詞作曲する時はKKって名乗ってんだけど! ガンガン、ノリノリのナンバーばっかでいいんだよ! Cacco with bangの曲は殆どKKが作ってるんだぜ! ギターのHAL(ハル)やドラムの流星さんも作ってるけど、結局KKが併記されてることが多いな!」
熱く語る拓弥に「判ったよ、聞かせてもらう」と話を断ち切り部屋に入ると、パソコンを立ち上げそれを挿入する。歌詞カードを引っ張り出して確認した、一曲だけ花村莉子の名前を見つけた。 再生ボタンを押すと、聴き慣れた声が流れて来た。香子のはずなのだが、双子だとこうも声が似るのだと初めて知った。
思わず目を閉じて聞き入る。
優しい曲調の、穏やかな歌詞だった、好きな人の傍にずっといたい、でも物理的にそうはいかないからせめてこの曲を傍に置いて、そんな少女の心を顕した歌だった。その言葉が莉子本人の口から発せられた言葉だとしたら悪い気はしない。
「……」
こんな曲を、たった一人部屋に閉じこもり、寝食をおろそかにした女性が作っているのかと思うと、やはりどこか淋しい気がした。 どんな思いでこんなにも優しい曲を──きっと今も作り続けているのだろう。
途端に深呼吸をし全身に血液が回り出すのを感じる、全身が心臓になったように感じた、指先も脳さえもドクドクと脈打って震える。
「……藤堂……さん……っ」
両手で顔を覆った。
好きだと告白されるのは初めてだった、こんなにも誰かを思って狂おしい気持ちになるのも──。
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買い物から戻った尊は、まだ家に居た拓弥に香子のバンドの事を聞いた。 確かに数曲、花村莉子の名前で楽曲がある事を拓弥は知っていた。
「貸してやるよ!!!」
喜び勇んで部屋からCDを持ってきた。
Cacco with bangはデビューからほぼ毎年アルバムを出している、計五枚のアルバムだった。
「莉子さんが作ったのはバラードとかポップス調だよなあ。でも俺はKKが作った曲が好きだな! Caccoは作詞作曲する時はKKって名乗ってんだけど! ガンガン、ノリノリのナンバーばっかでいいんだよ! Cacco with bangの曲は殆どKKが作ってるんだぜ! ギターのHAL(ハル)やドラムの流星さんも作ってるけど、結局KKが併記されてることが多いな!」
熱く語る拓弥に「判ったよ、聞かせてもらう」と話を断ち切り部屋に入ると、パソコンを立ち上げそれを挿入する。歌詞カードを引っ張り出して確認した、一曲だけ花村莉子の名前を見つけた。 再生ボタンを押すと、聴き慣れた声が流れて来た。香子のはずなのだが、双子だとこうも声が似るのだと初めて知った。
思わず目を閉じて聞き入る。
優しい曲調の、穏やかな歌詞だった、好きな人の傍にずっといたい、でも物理的にそうはいかないからせめてこの曲を傍に置いて、そんな少女の心を顕した歌だった。その言葉が莉子本人の口から発せられた言葉だとしたら悪い気はしない。
「……」
こんな曲を、たった一人部屋に閉じこもり、寝食をおろそかにした女性が作っているのかと思うと、やはりどこか淋しい気がした。 どんな思いでこんなにも優しい曲を──きっと今も作り続けているのだろう。