Crazy for you ~引きこもり姫と肉食シェフ~
そしてもし家の手伝いをしていたら、今頃こうして並んで食事を作ることなどなかったかもしれない──。
小一時間ほどで、拓弥の分を弁当箱に詰め、テーブルに皿が並ぶ。
「ラペは明日の方が味が染みて美味しいだろうから、明日の分もとっておこう」
元々莉子は二本分も千切りをやらされた。
「明日はもう少し早くこっち来るから、一緒に買い物に行こう。今日は莉子んちの食材使って拓弥の分も作っちゃったし」
「そんなのいいよ! いつもごちそうになってるの私だし!」
「そんなのいいのに。こっちは餌付けしてるだけだから」
「え、餌付けって……!」
驚く莉子に、尊はにこっと最高の笑顔を見せる。
そんな笑顔が見れなくて、餌付けの真意も聞けずに莉子は慌てて視線をそらせた。
「あの……明日もお店はお休みなの?」
向かい合わせに食事をしながら、莉子は聞いた。
「ああ、さっき清掃業者に来てもらって見積もってもらったら、丸二日は欲しいって言われた。んで中のもんも殆ど買い替えだから、それが揃うまでは開けられないな」
「そうなんだ……大変だね」
「ったく、何の恨みがあってここまでするんだか」
恨みがなければ、そこまでしないだろう。しかし莉子はもちろん、尊にも心当たりなどない、そこまでするほどの。
「……あ、ねえ……」
莉子は小さな声をかけた。
「うーん?」
「テーブルとかも全部買い替えじゃ……お金……って、かかるよね」
「そうだな、あそこまでされたら開店資金と変わらない」
「じゃあさ……よかったら……援助、するよ……?」
年間数億円を稼ぎ出す莉子だ、実際店の道具を揃えるのにいくら必要かは莉子には皆目見当がつかないが、十分援助できるだけの預貯金はあると思っている。
尊もそんな莉子を頼るのは間違いではない、とは思うのだが。
尊はにこっと微笑んだ。
「大丈夫、俺だって一応予約の取れないだ、行列の絶えないだの言われてるレストランやってたの、それなりの蓄えはあるよ。まあ実際予約取れないとかないんだけど」
噂とは恐ろしいと思う。
「借金は多少はするけど、返せない額ではないよ。でも本当に困ったら、莉子を頼らせてもらうな」
莉子は小さく頷いた。
「ありがとな、心配してくれて」
「ううん……尊のご飯、おいしいし……それをみんな楽しみにしてるだろうから……」
そんな事は言い訳だと、莉子自身だって判っている。見返りの期待などなく尊の力になりたいと思うのだ。
食事を済ませて、並んで片づけをする。
尊が洗って、莉子が流していた。
「まだ仕事?」
尊が聞く。
小一時間ほどで、拓弥の分を弁当箱に詰め、テーブルに皿が並ぶ。
「ラペは明日の方が味が染みて美味しいだろうから、明日の分もとっておこう」
元々莉子は二本分も千切りをやらされた。
「明日はもう少し早くこっち来るから、一緒に買い物に行こう。今日は莉子んちの食材使って拓弥の分も作っちゃったし」
「そんなのいいよ! いつもごちそうになってるの私だし!」
「そんなのいいのに。こっちは餌付けしてるだけだから」
「え、餌付けって……!」
驚く莉子に、尊はにこっと最高の笑顔を見せる。
そんな笑顔が見れなくて、餌付けの真意も聞けずに莉子は慌てて視線をそらせた。
「あの……明日もお店はお休みなの?」
向かい合わせに食事をしながら、莉子は聞いた。
「ああ、さっき清掃業者に来てもらって見積もってもらったら、丸二日は欲しいって言われた。んで中のもんも殆ど買い替えだから、それが揃うまでは開けられないな」
「そうなんだ……大変だね」
「ったく、何の恨みがあってここまでするんだか」
恨みがなければ、そこまでしないだろう。しかし莉子はもちろん、尊にも心当たりなどない、そこまでするほどの。
「……あ、ねえ……」
莉子は小さな声をかけた。
「うーん?」
「テーブルとかも全部買い替えじゃ……お金……って、かかるよね」
「そうだな、あそこまでされたら開店資金と変わらない」
「じゃあさ……よかったら……援助、するよ……?」
年間数億円を稼ぎ出す莉子だ、実際店の道具を揃えるのにいくら必要かは莉子には皆目見当がつかないが、十分援助できるだけの預貯金はあると思っている。
尊もそんな莉子を頼るのは間違いではない、とは思うのだが。
尊はにこっと微笑んだ。
「大丈夫、俺だって一応予約の取れないだ、行列の絶えないだの言われてるレストランやってたの、それなりの蓄えはあるよ。まあ実際予約取れないとかないんだけど」
噂とは恐ろしいと思う。
「借金は多少はするけど、返せない額ではないよ。でも本当に困ったら、莉子を頼らせてもらうな」
莉子は小さく頷いた。
「ありがとな、心配してくれて」
「ううん……尊のご飯、おいしいし……それをみんな楽しみにしてるだろうから……」
そんな事は言い訳だと、莉子自身だって判っている。見返りの期待などなく尊の力になりたいと思うのだ。
食事を済ませて、並んで片づけをする。
尊が洗って、莉子が流していた。
「まだ仕事?」
尊が聞く。