Crazy for you ~引きこもり姫と肉食シェフ~
「うん」
「ふうん、莉子の仕事風景、見てようかな」
「え、つまんないよ? パソコンの前でじっとしてるだけだし」
「そうなのか」
「それより、早く帰ってあげなよ、拓弥君、待ってるんじゃ?」
「いつもなら俺もまだ仕事中」
「あ、そっか」
その時、ふと、二人の手が触れた、尊の手の泡が莉子に移る。
莉子はびくりと体を震わせて、慌てて手を引いた、流れる水で泡を落として皿を取ろうと伸ばした手を、尊の泡が付いた手が握った。
「……あ、洗えないよ……」
「──うん」
離して、と思うのに、尊は手の平を合わせて指を絡ませる、ますますがっちり手を握ることになる。
「あの……」
「あったかいな、莉子の手は」
「そりゃ……お湯で洗ってるし……」
尊の手に力がこもって、莉子の体は硬直する。
「あ、あの……」
「ん?」
尊が莉子の顔を覗き込む、莉子はなぜだかほんの少しむっとした。
「……なんかさ、尊、すぐに人の体触るよね」
「好きな子に触りたいのと思うのは普通だと思うけど?」
「す、好き……っ」
何度言われても慣れない。
「こんな、手だけじゃなくてさ、もっといろんなとこ触りたいんだよね……俺以外は触らないようなとことか」
「ど、どこ……?」
尊はにやりと笑って、莉子の耳に唇を近づけ希望の場所を囁こうとした。その気配を察した莉子は、慌てて空いた手で防御する。
「……や、駄目……!」
ばしゃ、と言う水音と、尊の「わっ」と言う悲鳴は同時だった。 莉子が慌ててそちらを見ると、まずは自分の濡れた手が目に入り、その向こうにいる尊の顔も随分な量の水が滴り落ちていた。
「──ひどいな」
「ご……ごめんなさい!」
タイミング的なものだろう、自分の手が相当量の水を投げ飛ばしたと判った。
「た、タオル……!」
「ああ、いいよ、ここのタオルで」
シンクの手前にかけてあったタオルを尊は抜き取る。
「で、でも……!」
散々使って少し湿ったタオルだ。
「もう家帰るだけだから多少濡れてても気にしない。まったく……どれだけ莉子に嫌わてるかよく判ったよ」
「嫌ってなんかないよ! びっくりしただけで……尊が触りすぎ!」
タオルで顔を拭っていた尊は、その上部から目だけを出して莉子を見つめた。
真っ赤な顔で俯く莉子がいた。
「……」
タオルの両端に近い辺りを左右の手で握ると、そのタオルを莉子の首にかける。
「え?」
何事、と思う前に、そのタオルが引かれ、莉子は尊の胸に倒れ込んだ。
「え、え……えええ!?」
首の後ろをタオルで固定されただけだが、莉子は逃げられずそのままじたばたし始める。
「触ってない、今触ってるのは莉子の方、だったらいい?」
「駄目ダメだめ! 離してー!」
嫌がる莉子が可愛くて面白くて、尊が解放してやったのは少し後だった。
「ふうん、莉子の仕事風景、見てようかな」
「え、つまんないよ? パソコンの前でじっとしてるだけだし」
「そうなのか」
「それより、早く帰ってあげなよ、拓弥君、待ってるんじゃ?」
「いつもなら俺もまだ仕事中」
「あ、そっか」
その時、ふと、二人の手が触れた、尊の手の泡が莉子に移る。
莉子はびくりと体を震わせて、慌てて手を引いた、流れる水で泡を落として皿を取ろうと伸ばした手を、尊の泡が付いた手が握った。
「……あ、洗えないよ……」
「──うん」
離して、と思うのに、尊は手の平を合わせて指を絡ませる、ますますがっちり手を握ることになる。
「あの……」
「あったかいな、莉子の手は」
「そりゃ……お湯で洗ってるし……」
尊の手に力がこもって、莉子の体は硬直する。
「あ、あの……」
「ん?」
尊が莉子の顔を覗き込む、莉子はなぜだかほんの少しむっとした。
「……なんかさ、尊、すぐに人の体触るよね」
「好きな子に触りたいのと思うのは普通だと思うけど?」
「す、好き……っ」
何度言われても慣れない。
「こんな、手だけじゃなくてさ、もっといろんなとこ触りたいんだよね……俺以外は触らないようなとことか」
「ど、どこ……?」
尊はにやりと笑って、莉子の耳に唇を近づけ希望の場所を囁こうとした。その気配を察した莉子は、慌てて空いた手で防御する。
「……や、駄目……!」
ばしゃ、と言う水音と、尊の「わっ」と言う悲鳴は同時だった。 莉子が慌ててそちらを見ると、まずは自分の濡れた手が目に入り、その向こうにいる尊の顔も随分な量の水が滴り落ちていた。
「──ひどいな」
「ご……ごめんなさい!」
タイミング的なものだろう、自分の手が相当量の水を投げ飛ばしたと判った。
「た、タオル……!」
「ああ、いいよ、ここのタオルで」
シンクの手前にかけてあったタオルを尊は抜き取る。
「で、でも……!」
散々使って少し湿ったタオルだ。
「もう家帰るだけだから多少濡れてても気にしない。まったく……どれだけ莉子に嫌わてるかよく判ったよ」
「嫌ってなんかないよ! びっくりしただけで……尊が触りすぎ!」
タオルで顔を拭っていた尊は、その上部から目だけを出して莉子を見つめた。
真っ赤な顔で俯く莉子がいた。
「……」
タオルの両端に近い辺りを左右の手で握ると、そのタオルを莉子の首にかける。
「え?」
何事、と思う前に、そのタオルが引かれ、莉子は尊の胸に倒れ込んだ。
「え、え……えええ!?」
首の後ろをタオルで固定されただけだが、莉子は逃げられずそのままじたばたし始める。
「触ってない、今触ってるのは莉子の方、だったらいい?」
「駄目ダメだめ! 離してー!」
嫌がる莉子が可愛くて面白くて、尊が解放してやったのは少し後だった。