野獣は時に優しく牙を剥く

 家へ送り届けられると車を降りた澪に谷は言葉をかけた。

「色々言ったけど……これだけは誤解しないで欲しい。
 俺はいつでも澪の味方だ。
 相談には乗るから夢のことも家族のこともよく考えて。
 その合間に俺のことも少しは考えて。」

 最後は茶化して言う谷に憎まれ口をたたく。

「谷さんのことは考えません!」

「ハハッ。取りつく島もないのな。」

 彼は変わらぬ優しい眼差しを向けて一言言い残すと去って行った。

「澪は一人じゃないよ。安心して。
 おやすみ。」

 去って行った方を見つめて澪は呟くように言った。

「おやすみ……なさい。」

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