野獣は時に優しく牙を剥く
高齢者向けについてはリハビリに使う負荷の少ないレクリエーションのような体操をみんなの意見を取り入れながら構築している。
子どもについてはただの子ども向けだけではなく、颯太や浩太のように喘息で運動規制がある子ども向けのものも考えた。
そして、前回の体験で祖父が言い淀んだ問題点は『若い子のようにスマホをいつでも触れる環境にない』というものだったらしい。
その点は谷も考えていたらしく、既に病院のリハビリステーションやデイサービスなど高齢者の方が体を動かしそうな施設と提携できるように営業がなされていた。
個人で持っていなくても施設に行けば使えるというスタイルで使用してもらえる環境作りも進められている。
谷の先を読む仕事ぶりに舌を巻くとともに頼もしさを感じた。
側で彼の仕事ぶりを見れば見るほど自分とは世界の違う人だということをさまざまと見せつけられている気分になった。
だから前以上に彼が言ったことは戯言で軽口なのだという考えが強くなっていった。
彼のような人が自分のような小娘を嫁に欲しいだなんて鼻で笑ってしまう。