野獣は時に優しく牙を剥く

「谷くんがalbaを立ち上げようとした時のことを聞いたことあるかい?」

「はい。前園さんが協力してくれたからこそ会社を興すことが出来たと。」

 澪の台詞を聞いて前園は大らかに笑った。

「ハハッ。彼なりの謙遜だな。
 もちろん社会的に信頼されていた私が谷くんを助けようとしているというのは強力なコネクションになるかもしれない。
 けれど実際は私が協力するというふれ込みはただのきっかけに過ぎないよ。」

 谷が話してくれたalba起業当時の話。
 それを前園の立場から見た意見を聞くのはとても興味深かった。

 コーヒーを再び一口飲んだ前園が次の言葉を話し出すまで待つ。

「堂島さんに桐山くん、近藤さんも。
 albaを立ち上げたいと言った谷くんに力を貸そうと言ったメンバーだ。」

 CEOに続いてCCO、CFO、CAO、CIO……横文字の役職者達が名を連ねており、前園さんを含む堂島さん、桐山さんに近藤さんはalbaにとって重要な人物だ。

「彼らは直接谷くんに会って彼の熱量に圧倒されたと言っていた。
 最後に大切なのは人を動かす熱意だよ。」

「熱意……。」

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