野獣は時に優しく牙を剥く

 驚いて顔を見上げようとした行動を読んだのか谷に阻まれた。
 腕にギュッと力が込められて顔はますます谷の胸元に押さえつけられる。

「悪いけどそのまま聞いて。
 目を見て言うべきなのは分かってる。
 けど、上手く言える気がしなくて。
 澪が思ってくれているより俺はきっとずっと小心者で、澪に嫌われたかもって落ち込んでた。」

 嘘……。

 そんなわけない。だって彼は、、。

「さぁ。食事にしよう。」

 腕を緩めた谷はすぐに背を向けてしまって、その表情は見えなかった。

 たくさんの料理が並ぶダイニングに着いた時にはいつものにこやかな谷に戻っていて、どんな顔で話していたのかは分からなかった。

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