野獣は時に優しく牙を剥く
確かにお昼休みは一人の方が気楽で一人で食べていたし、食べ終わると同時に勉強をしていた。
ひどい時は食べる前から参考書を開いてお弁当を食べ忘れることがあったくらいで……。
「凛とした顔で「夢があるので」と言うだけ言って、すぐに「もう行きます」って。
まぁ、その程度だったから覚えてなくても仕方ないかな。
俺は衝撃だったけどね。」
肩を竦めて残念そうに谷は笑った。
そんな前に知り合っていたなんて。
「その頃から好きでしたって話なら純愛モノなんだけどさ。
残念ながら違うんだ。
その時はただ面白い女子高生がいたもんだってくらい。
俺にしたら女子高生なんてガキでしかなかったし。」
息をついた谷は組んだ足の上に手を置いて少し遠くを見るような顔をした。
「ただ、その夢があると語っていた子が死んだような顔付きで自分の会社の就職面接に来て気になった。
はっきり言って私情挟みまくり。」
「私情……だけですか?」
思わず声が漏れると谷は頷いた。