野獣は時に優しく牙を剥く
「あぁ。私情だね。
あの時に夢を語って、その夢を諦めた子がどんな仕事をするんだろうって興味があった。」
そんな、、理由……。
信じていた何かを崩された気がして、力なく質問を向けた。
「私がalbaに何か貢献できそうだからってそういうわけじゃ……。」
「笑っちゃうくらい家族思いの澪なら俺にないものを補えるとも思ったよ。」
「俺に……ないもの?」
「愛とか、そういうの?」
愛は………彼の中には存在しないんだ。
鈍器で殴られたような気分になって目の前が歪んで見える。
「やっぱりからかっていたんだ。」
本音が漏れて悲痛な思いに声は掠れて消え掛ける。
谷は静かに告げるだけ。
「最後まで聞いて。」
手を伸ばしてきた谷の腕を振り払った。
「……ヤダ。」
谷は拒否された手で自分の頭をかき回して大きなため息を吐いた。