野獣は時に優しく牙を剥く

「私、龍之介さんと澪さんを悲しませたかったわけではありません。
 だからやめましょうと、虎之介さんに何度もお願いしたのですけれど……。」

 不安そうな萌菜に澪は微笑みを向けた。

「大丈夫ですよ。
 きっと何もかも上手くいくと思います。」

 少しでも安心して欲しくて萌菜の両手に手を重ねた。
 上目遣いになった萌菜が花がほころぶように微笑んだ。

「ありがとうございます。
 澪さんが優しい方で本当に良かった。」

< 165 / 233 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop