野獣は時に優しく牙を剥く
内ももならマジマジ見るような無粋な真似はしないだろうと言われたこと。
もしも見られるようなことになったら、内ももを見るような状況になるのだから誘惑してしまえと言われたこと。
萌菜は全てを澪に打ち明けていた。
「で、内ももに何かあった?」
最終確認とばかり澪へ質問を投げる谷へ澪は観念して見たままを伝えた。
「赤い印はありました。」
ホッと息を吐いて顔を俯かせる虎之介を横目に澪は続けた。
「ただ、何かで描かれたモノだと思います。」
勢いよく顔を上げた虎之介を谷が制した。
「澪を罵るのはやめてくれ。
澪が言う真偽を俺が確認してもいいが、そうされて困るのは虎之介だろう?」
そう言われ、虎之介は反論する気力がなくなったように力なくソファへ再び腰を落ち着けた。
谷は虎之介への追及の手を緩めない。
「内ももへ精巧に家紋を描くのは自分でやれないだろうな。
虎之介。萌菜とそういう仲なんだろう?」
そこまで考えが及ばなかった澪はハッとして萌菜へ視線を泳がせた。
萌菜は赤面して顔を手で覆ってしまった。