野獣は時に優しく牙を剥く

「兄さん!いくら兄さんでもその言い草はあんまりだ!
 萌菜はそんな軽い女じゃない!」

 虎之介の噛みつくような言い分に谷はクスリと笑いを漏らした。
 その余裕な態度が虎之介の気持ちを逆撫でしている気がして澪はハラハラしながら2人のやり取りを見守った。

「あぁ。俺も萌菜が軽い女だとは思っていないよ。」

「だったら!」

「だから、虎之介に内ももを触らせたというのは、そういうことだろう?」

 絶句する虎之介は意味が分からない様子で頭を振っている。
 萌菜はますます赤くなって、澪の体に寄りかかった。

「谷さん、そのくらいにしておいてあげてください。
 萌菜さんが可哀想です。」

「あぁ。我が弟ながらにあんまりに鈍感だから。
 萌菜もつらい役回りをさせてすまなかったね。」

 萌菜は谷の優しい声かけに小さく「いえ。そんなことは」と応えた。

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