野獣は時に優しく牙を剥く

 久しぶりに会える週末になると、気持ちがいつも以上に弾んでいる自分に苦笑する。

 マンションの扉を開けるとすぐに出迎えてくれた龍之介に抱きしめられた。

「澪。会いたかった。」

「ふふっ。会社で会ってるじゃないですか。」

「会社では違うだろう?
 それとも会社で抱きしめてもいいと言うのならそうするけど?」

 不貞腐れたように言う龍之介がおかしかった。

 その反面、自分は素直じゃない。
 自分だってプライベートで早く会いたいと思っていたのだから。

「ご飯、食べられました?」

 買い物してきた袋を受け取って運んでくれる龍之介へ質問を向けると、龍之介は隠そうともせずに欲情を露わにした。

「俺は一週間分、愛し合いたいんだけど。」

 振り向きざまにキスをされて後退ると「まだまだ初々しいしいや」と笑われた。

 今までは週末でも会えないことはザラで、今週は先週に引き続き会えるなんて稀なくらいだ。
 それなのに……。

「龍之介さんの変貌ぶりに驚いてます。」

 この人は本当に「恋人との時間よりも仕事」と言っていた人と同一人物?
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