野獣は時に優しく牙を剥く

 澪が焦った顔をしていると谷はクスリと笑う。

「澪が、思っていた以上に可愛いからね。」

 甘い言葉を囁く龍之介に戸惑って顔を赤らめる。

 食材を冷蔵庫にしまいながら龍之介は驚くべきことを提案し始めた。

「澪は僕に縛られていたいと言ったよね?」

 僕と口にする彼は何に緊張しているんだろうと不思議に思って次の言葉を待つ。

「前は聞く前だったからちゃんとしたんだけど、どうだろう。もう一つ、僕から離れられなくなる理由を作らないかい?」

 話の核心がぼやけていて、何を言いたいのか分からない。

「どういう……ことですか?」

「……うん。もしもだよ。
 僕たちに赤ちゃんが出来でもしたら離れられないだろうなって思って。
 それはさすがに順番を守ったほうが良かった?」

「え、なっ、それって、出来るようなことをするってことで、すか?」

「いや、正確には出来るようなことはしているんだけどね。」

 言葉にされると恥ずかしい。
 けれど確かに愛し合うということはそういうことだ。

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