野獣は時に優しく牙を剥く
「僕としては今すぐにでも澪を嫁にもらってしまいたくて、その口実になるのならベイビーだって大歓迎なんだよ。
澪のおじいちゃんはいいとしても、俺のとこのじいさんを言いくるめるのに一番手っ取り早いかと……いや、ごめん。これは意気地なしの考え方だな。」
澪の顔がどんどん曇っていくのを見て、龍之介は言葉を濁した。
澪は堪らなくなって口を開く。
「私は、身重になったからという理由がなければ谷さんのおじい様に紹介できない女なんですね。」
「あ、いや。そういうわけじゃ……。」
近づこうとする龍之介から同じように離れて距離を取る。
「澪、ごめん。
頼むから誤解しないで。」
自分だって言い訳がなければ彼の側にいられないと思っていた。
だからって……。
「澪、せっかく会えた週末に喧嘩はしたくない。」
眉尻を下げる龍之介に頭を振って拒否する姿勢を見せる。
「澪は危ういんだ。
前から可愛いと思っていたけど色気まで備わったって会社で噂してる声を聞く俺の身にもなって。」
「……それって、やきもち?」
驚きで声を上げると龍之介はバツが悪そうな顔を隠すように片手で覆った。