野獣は時に優しく牙を剥く

「うるさいな。
 いい年のおっさんがって思ってるんだろう?」

「おっさんだなんて。
 それに、それとおじい様の件は関係ないんじゃありませんか?」

「……どんな手段だろうと早く俺のものって言える理由が欲しいだけ。」

 拗ねたような龍之介が新鮮でクスクスと笑う。
 いつも余裕で、自分よりものすごく大人だと思っていた彼の意外な一面。

「私、頼りないですし、おじい様が認めてくれそうな家柄でもありませんけど。
 龍之介さんの側にはいたいと、これでも思っているんですよ?」

「澪……。うん。ごめん。
 家柄なんて関係ないし、澪にしかないいいところがたくさんあるのを俺は知ってる。
 ただ……本当に怖いじいさんで。
 嫌な思いをさせるだろうけど、今度一緒に挨拶へ行ってくれる?」

 ひどく小さくなって頼む龍之介にクスリと笑みをこぼして「えぇ。もちろんです」と微笑んだ。
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